虹の会機関紙「SSCにじ」7月号より転載。
専従は便利屋じゃない~専従を可視化する~
文:虹・専従介助者労働組合 委員長 外口孝治
専従が入った泊まり2人体制
4月、羽富が気管切開をして家に戻ってきた。1月に体調が悪くなり死の淵まで行って、急遽、気管切開することになった。そこから羽富は退院に向けて体調を戻し、専従と介助者は退院後の介助の体制を考えることになった。
3月に新年度の契約に向けて、これまでの反省を踏まえて介助者一人一人と話をした。その際に、介助者から「羽富の体調が悪くなってきてから、泊まり1人だとかなりきつくなってきた」という話があって、気管切開した羽富のこれからの生活、介助者からの「きつくなってきた」を踏まえて、退院後は泊まり2人体制とすることにした。
この時点で泊まりの2人目は全くいないし、更に1月に昼5入っていた介助者が急に辞めてしまったりで、介助の体制としては半分以上埋まっていない状況だったけれど、羽富の退院に合わせて、空いている泊まりに専従が入ることにして泊まり2人体制をスタートさせた。
それから3ヶ月経って、介助者とかから人を紹介してもらって泊まり2枠埋まったけれど、他の曜日は専従が週2回ずつ泊まりに入ることが続いている。
専従の「無理」が伝わらない
今の形は、介助者を守るということを形として見せていくということで、専従を入れる無理な形でスタートさせた。専従が入ることで羽富の介助はいつも通りに回っていて、それが専従の役割だったりするけれど、逆にこの状況は羽富も介助者も無理をしていない中で介助が回っているということになる。
専従が定時で介助に入り続ける異常な状態が続いているのに介助は何事もなく毎日回っていて、専従が時間通りに入って空いた枠を埋めることで、専従の無理をしている状況を羽富や介助者に伝わりにくくしてしまっているのではないか。専従は、井上、市丸たちとにじ屋をやったり遊びに行ったり、会計事務をやったりしながら、介助が埋まらなかったら必ずそこに入る。そして、その分を次の日に休んでいるわけではないし、その分の時間外の給料が出るわけではない。
専従を使うのは、時間や介助の指示の仕方とか介助者を使うのと同じようにはいかないはずなのに、介助は17時から入らないといけない、専従がする介助も介助者と同じことができなきゃいけないと介助を聖域化してしまってはいないだろうか。
これは専従自身がそうしてしまっているところもあるけれど、結果、専従がやっていることやその背景にあるものを見えなくさせてしまっている。
例えば、羽富の介助者募集。専従は自分のこの無理な状況を変えるために、とにかく新しい介助者早く来てとポスター貼りをして、知っている人、仕事探している人がいたら紹介してと声を掛けていく。でも、介助者はいつもと変わらず無理な状況にはなく苦しくなく、ポスター貼りをする必要性を感じにくい。介助が埋まっていないことは介助者に直結することなのに、今のこの状況を変えたいと思うことなのに、専従が入って何事もなく介助が回っていることで、「介助者が足りない」ことを自分のこととして考える必要がなくなる。
例えば、5人でやっていたところを1人辞めて4人でやってしまっていたら、「人が必要」ということが見えなくなって人は増やせない。今は、無理をして穴を埋めていることを外に向けて「無理の見える化」をしていかないと、人が足りないことが伝わらない。
全員に無理をさせよう、専従を使うなということでは全くなく、自分自身が無理をしているからこそ、この表面的な平穏を変えていくためにも無理をしている状況を言葉にしていく。
介助とヒロイズム
この可視化は、専従だけじゃなく介助者もみんなそう。自分がやればいいんだって思っていたらそこに関わる人や応援してくれる人は広がっていかないし、自分自身が何も変わらない。まして、職場も変わらない。
これまでの介助は物理的というか穴埋め的にこれをやっていればいいんだという感じでもあって、それは失敗だったと気づき、契約に向けて介助者といろいろな話をした。 その中でも、メール等を使って体調や家のこともひっくるめてお互いに伝え合う、共有していく必要性を強く感じた。 泊りの人が遅れるとか、それにより○○が出来ないとか、休みがつぶれているとか、子どもが熱出してとか、お互いに「可視化」させてそういう情報を共有した方が、いい。自分自身が同じ状況にもなるわけだし。
他の介助者の状況を知らない、お互いにほとんど話をする機会がない中で、例えば介助に穴が空いた時に「なんであの人はいつも入らない!?」って介助者同士で思ってしまうことがあるかもしれないし、それだと介助者間で信頼感は生まれない。お互いの状況を知っていた方が、介助の穴が埋まったりと早く解決するかもしれない。お互いにラクになる。
新年度からの契約に向けて介助者と話した時に、こうやってオープンに自分の状況を伝えながら「じゃあ、どうしようか」って一緒に考えられるってことが、すごく重要なんだなとあらためて思う。
介助をやっていて葬式に出られなかったという話が出たりするけれど、それはヒロイズムであって、ただただ、人が足りないってことだけ。 24時間365日介助者が必要なんだと伝えるためにそう言っていたこともあったけれど、ここからお互いを可視化することで「休んで行ってきて」と言える労働環境にしたいし、介助職という中で有休も正々堂々と取って旅行に行ってほしい。
「無理」を共有できる仲間を増やしたい
虹の会は、例えばお金が足りないとか品物が足りない、バスに乗れないとか、その時の状況を機関紙やビラ等でリアルに伝えていた。まさに可視化して、応援してくれる人を増やしてきた。
専従の役割は、人の輪っかを外に広げていくこと。介助の枠が空いていたら介助に入るけれど、その前に「ここ入れない?」って介助者一人一人に連絡して、もし埋まらなかったら専従が介助に入るという面倒くさいことをやっていた。最終的に枠が空いていれば介助に入るけれど、それは仕事ではないというか、専従は専従介助者だから介助も仕事なんだけれど、介助をやっていればいいっていうことではないし、どうやったら自分が介助に入らなくなるかということが本来の仕事で、そのためには人の輪っかを広げていくしかない。
ある意味、「無理」の共有。そのために、専従を可視化していく。専従は市丸たちの親でもないし、何でも引き受ける便利屋でもない。24時間使っていいわけでもないし、「使っていいわけではない」上で、「使わざるを得ない」ということでしかない。それを可視化していきたい。
介助の穴が埋まらなかったら専従が入るということが、「最後は専従がいるから」とあたりまえにされたくないし、あたりまえにされてしまったらそれは面倒を見る親でしかない。そしてそれは、障害者はお世話される存在。そんな状況にはしたくないし、専従自らが「黙ってやらなきゃ」「自分がやんなきゃ」と「無理」をブラックボックス化してしまったら、そこに「周りは敵」という感情を作り出し、更にそれは、周りの人は誰もやらないからと自分と周りの人たちの分断を引き起こす。
まずは「できる」「できない」「これならできる」「今はできない」を言葉に出して、できるからマル、できないからバツとするのではなく、そこからどうできるのか一緒に考えられる「無理を共有できる仲間」を増やしていきたい。 そのために、専従を可視化していく。
了
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