自分が品物を提供する側になることを、想像してみます。すると、けっこう大変なことだと思い至るのです。
まず、家にある品物になりそうな物を集めて、箱や袋にまとめるという手間がかかります。扱っていない品物もあるようだから、電話して聞いてみなければならない。家まで回収に来てくれるとはいえ、回収日はにじ屋側から指定される。回収時間は9時から15時とはなっているものの、その間で何時に来るのかは分からない。家をあける場合は、「にじ屋宛て」等わかるような貼り紙をして、玄関の外に出さなければならない。それに、雨が降ったらどうしたらいいだろう…?
にじ屋に品物提供するということは、毎日忙しい中で、そういった時間と手間を取られるということなのです。それでも提供してくださる方がたくさんいるということを、にじ屋はまず、誇りに思いたいと思います。
「障害者」は、社会の中で少数派です。しかし一方で、誰でも明日から障害者になる可能性は、あります。交通事故に遭って、車イス生活になるかもしれない。病気で倒れて人工呼吸器を使うことになるかもしれない。そうなっても、今までどおり地域で暮らしたいと思いませんか?いや、施設や病院に入りたい、という方もいるかもしれません。それはそれで個人の選択です。でも、地域で暮らすか施設で暮らすかということを、ちゃんと選択できる世の中であってほしいと思います。
残念ながら現在、障害をもちながら地域で暮らすというのは、ハード面でもソフト面でも壁が多々あります。車イスだと駅のホームに上がれない。毎日24時間365日の介助者を得られない。働くつもりで通っている作業所で、利用料をとられる。知的障害者が街を歩いていると奇異の目で見られる。障害者だというだけで、大家さんから入居を拒否される。働く場所が見つからない。就職しても、まっさきにリストラの対象。外を歩いていると、なぜか「お散歩ですか?」と聞かれる。社会の中で、お荷物扱い。
地域で暮らすことが、その壁により阻まれるという社会であってはならないと思うのです。数ある「壁」の中で、就労の問題について取り組んでいるのがにじ屋です。
にじ屋は、障害をもつ人ももたない人も一緒に働く、ということを実験、実践している場所です。障害をもっていても、働いて給料を稼いでそれを生活の糧とすることができるのだ。そしてそれは、「仕事ごっこ」(注)ではなく、しっかり地域の経済活動のひとつとして回っていけるのだ。試行錯誤しながらも、それらのことを証明するべく運営しているのが、にじ屋です。
にじ屋に品物を提供するということは、すでに、この理念をもって運営するにじ屋の、その一端を担っていることになります。これを読んでいるみなさんは今、障害者ではないかもしれない。けれど、そのみなさんの時間と手間をかけた提供品が集まって、にじ屋は成り立ちます。
そしてもし、みなさんが障害者になったときは、ぜひ私たちが作ってきたものを土台として利用し、地域で生活していってほしいと思っています。にじ屋は、誰が障害者になっても、働きたいと思えば地域の中で働き、そして生活していけるのだということを証明するために、頑張っていきます。そこに今、あなたの時間と手間を、足して下さい。「にじ屋では、いつでも提供品を集めています。お宅に眠っているものは、ありませんか?」
(*注「仕事ごっこ」)
障害者作業所では、同じリサイクル品を扱うにしても、提供するのは障害者の親やその周辺の人、買いに来るのも同じ…という状況は少なくないようです。仕事とは、社会に貢献すること。障害者当人の周りにいるごく限られた人たちだけで成り立ってしまうのは、仕事とはいえないのではないでしょうか?さらに、仕事をしても、もらう給料(工賃)が月に1万円以下という作業所も多々あるようです。給料とは、生活の糧なのに。その状況に置かれている障害者は、現在養ってくれている親の亡き後、どうやって地域で生きていくのでしょうか?結局、親亡き後、障害者は施設に行けばいいのだという世の中の「常識」を、強固にしているだけだと思うのです。私たちは、そこから脱却したい。
にじ屋への提供品。それは、あなたがかけた時間と手間。私たちはそれを集める。もし明日あながた障害者になったら、私たちが作ってきた地域で生きるための土台を、ぜひ利用してほしい。そのために、にじ屋はもっともっと大きくなりたい。だから今、あなたの時間と手間を、にじ屋に足してください。
にじ屋への品物提供に、ご協力お願いします。http://www.nijirock.com/nijinokai/nijiyacivic
カズミ
「にじ屋(Since2001)」は「どんなに障害が重くても地域で暮らすのがあたりまえ」をスローガンに掲げる障害者団体「虹の会(Since1982)」が母体の「障害者生活ネットワークうらわ(Since1997)」が運営する、巨大倉庫を店舗化したリサイクルショップ(BACA-SHOP)です。障害のある人もない人も、それぞれが役割を持ち、それぞれが大人として影響し合いながら、働き、遊び、青春と共に生きる…そんな場所を目指し、活動を続けています。営業は毎週水曜日~日曜日10:30~18:00。販売している品物は、地域(市民)を皆さんからの提供品(無償でありながら皆さんの大きな協力の意思により、程度の良い品物が多数寄せられます)です。品物提供は年中受け付けています。キーワードは「さいたま市」「障害者」「自立生活」「親から独立した生活」「ネット」「バカショップ」「にじ屋」「提供品」「モデル事業」。お問い合わせはすべて048-855-8438虹の会障害者生活ネットワークうらわまで。http://www.nijirock.com/nijinokai/nijiya http://www.nijirock.com/nijinokai/net