虹の会機関紙「SSCにじ」9月号より転載
リモートできない私たちにPCR検査はどうしても必要
文責 虹の会・内藤亜希子
コロナ感染を拡げないためのPCR検査の必要性については、特効薬がない、無症状があり得るというコロナの特性から、最も重要と言えます。
人にうつす病気とはいってもインフルエンザや風邪など、必ず症状があれば症状で判断できるので、その時点で人から隔離された状態で養生すればいいのですが、それができないコロナに関しては、「自分が感染しているのか」「していないのか」と確認できることが重要です。
確認できれば、例えば、人と接触しないでできる形で仕事を行うとか、店を休みにして家にこもる生活などで、コロナに関しては感染を防ぐことはできるのだと思います。
しかし、休業分の収入が保証されないとか、生活必需品は結局買いに出ないと生活できないとか、開けざるを得ないなど様々な理由でそれができないとなると、「感染しているのかもしれない」という不安におびえながら、人と接触しなければならなくなります。
とはいえ、無症状でのPCR検査は現在とても高く簡単に自分の感染を確認するのは難しいのです。
わたしたちの、介助を使った生活にまつわる人との接触、知的に障害があっての一人暮らしにおける人の助け、などは人との接触なしには成り立ちません。
最初の緊急事態宣言の時に、わたしたちはこれまでの活動および生活をどうすすめていったらいいのかについて、自分たちで後悔のないそして無理のない道を探っていくしかないのだと思いました。
介助は止めることができない。しかも介助者は近所の人とは限らず、介助に来るためにも公共交通機関を使わざるを得ない。そういう中で、ビクビクしながら介助を使う生活を続けてきています。私たちにできることは、介助者の具合がちょっとでも悪かったら休んでもらうことと、熱が出たら病院で検査をしてもらうことくらいでした。
また毎日のように開いているにじ屋も、不特定多数のお客さんが来る中で、店を開くかどうかみんなで考えました。
しかしこれも、みんなの毎日の動きの柱になるにじ屋をやらないとなると、コロナではなくても、みんなが安定した生活を送ることができるとは考えられませんでした。
なので考え方を、どうしたら後悔なく、ある程度の安心感を持って店を開くことができるかに転換して、人数を減らすために、自分たちの休みを多くしてにじ屋に出る機会を減らしたり、事務所やビラ配りなどにじ屋以外の仕事と人数を分散させたり、お客さんにも「感染を広げたらにじ屋を続けることができない」ということを伝え感染対策の意識を高めてもらったりということをしながらにじ屋を続けてきました。そして、消毒や換気については、科学的根拠に基づいた情報を常に意識し、形だけではなく必要な対策を講じてきました。
そんななか先月、ついに自分たちの中から感染者が出て、にじ屋を含め介助以外に関してはすべてストップしました(別記事参照)。「もし感染していたら」という心配は無限に広がるものであり、そうではないという確信を持たせてくれるものは何一つない状態であることを突きつけられました。
そこで一つ利用できたのが、PCR検査でした。
さいたま市は、独自事業として、7月から障害者施設の職員対象に検査補助事業を始めたのです。
緊急事態宣言で、いろいろな業種が具体的に名指しされ、「営業していい」「営業できない」と自粛要請という名の実質的なストップがかけられたときも、障害者の介助、作業所、施設などに関しては、「止められるものではない」ということで除外されていました。
まあ生活なので当然です。
ということで7月以降、介助派遣や、いわゆる知的障害者の作業所をやっている私たちも対象ということで、検査により陰性の確認をすることができています。はじめは、入所施設の職員が対象というところからだったので、集団かつ夜も含めた生活というところでしたが、それが、通所の施設に拡がりました。高価な検査を補助してくれるのは大いに評価します。
しかし、7月に始めた段階で、実施は9月までとされていて、もしや9月で打ち切るのか?!と思われましたが、9月の終わりに「10月もやります」という通知が。
どういうことかというと、これは、完了の目標がない事業ということなのです。
手袋やアルコールなど、コロナ対策に使う備品についても、去年補助金を出すと通知が来たので利用はしましたが、それも去年度末で打ち切り。というか今年度について、通知がないという状況なので、どういう方針の中で今止まっているのかは知らされていない状況です。
お金があれば続けられるし、なくなったらそこまでです、と言われていると感じました。
そしてそもそも市丸たち障害者自身については、検査の対象ではありません。
マスク手洗いが難しい人もいるし、人と接触しないように生活をすることは、障害のない人よりも難しい障害者に、唯一の感染確認の手立てであるPCR検査をしない、と言うのです。
さいたま市の独自の事業であるということなので、全体を考えれば、金額の規模としては小さくないのだろうとは思います。
ただ、イギリスをはじめ諸外国においては、気軽に日常的に検査が行われているというのだという状況を見聞きするに、できないという一言では受け入れられないものがあります。
もし市で予算が足りないということであれば、その問題を、障害者自身に「検査できない」という結果として返すのではなく、必要なものとして県や国に対し「市自身が」声を上げるべきことだと思います。
見聞きする範囲ではありますがそれでも漏れ伝わる寝屋川市など、市単独で、明確な意思を持ったコロナ対応をしている自治体もある中、さいたま市はそれをしているようには見えません。市が県や国に、「必要だ」と自信を持って金を要求できないのはなぜなのかはわかりません。「必要だ」と言える内容ではないと市に判断されたのでしょうか。「障害者はおいてけぼり」、そんな風に思えてしまいます。
現実問題として、PCR検査もない中で、感染が拡がったらどうなってしまうのでしょう。
感染が怖いからといって介助者が離れていったらどうなるのでしょう。
来月以降の検査について、一ヶ月刻みの期限付き刹那的検査の通知には、不安が募るばかりです。
障害を持って生まれたり、障害を負っても、誰もが幸せに生きられる市を目指すというさいたま市の宣言を、言葉だけではなく実現してほしいと思います。
了