【総括】第1回話し合い~さいたま市は駅無人化を進めるJRに是正を求めよ!
『事前連絡』は差別か?
【さいたま市との認識の違い】
私たち虹の会は、3月16日にさいたま市に対して「JRの駅無人化問題に関する要望書」を提出(※1)し、その回答を聞く話し合いを6月24日におこないました。
話し合い開催にあたり、市からは、コロナ感染予防対策としてこちら側の人数を10人までにしてほしいとの要望がありました。本当は決起集会に参加してくださった方など関心をもたれた多くの皆さんと行きたかったのですが、この状況ではやむを得ず、要望を飲む形となりました(参加者については議事録をご覧ください)。
さいたま市への私たちの要望は一点。
『さいたま市としてJRに対し「車いす利用者は事前連絡をしないと電車に乗れない」という状況をノーマライゼーション条例(※2)に則り早急に改善するよう指導してください。』です。
今回、市からの回答を聞き話し合った上でひとつはっきりしたことは、JRが車いす利用者に対し乗車事前連絡を求めていることについて、私たちはノーマライゼーション条例に抵触していると認識しているが、市は、そうは認識していないということでした。
ノーマライゼーション条例の中で、JRの対応が抵触していると私たちが考える条文は、以下です。
第2条(8) 差別 次に掲げる行為をいう。
オ 不特定かつ多数の者の利用に供されている建物その他の施設又は公共交通機関を利用する場合において、建物その他の施設の本質的な構造上やむを得ないとき、本人の生命又は身体の保護のため必要があるときその他の正当な理由があるときを除き、障害者の持つ障害を理由として、当該建物その他の施設又は当該公共交通機関の利用を拒否し、若しくは制限し、又はこれに条件を課すこと。
「車いす利用者に限っては事前連絡を求める」というJRの対応は、条文にある「障害者の持つ障害を理由として、…条件を課すこと」に当たる差別だと私たちは考えます。
しかし、さいたま市はそうは思わないと言うのです。
市曰く「JRの対応も変わってきていて、以前の『1日前に連絡してください』という貼り紙は破棄している。『できれば事前連絡してください』に変わった。現状では『1日前』がなくなったので抵触していないと考える」。
電車に乗ることに本当に何も制限をつけないということなら、『1日前』であろうが『できれば事前』であろうが、そもそも車いす利用者に対してだけ連絡を求める必要がありません。健体者と同じように、電車に乗ろうと思って駅に行ったら電車に乗れる、ただそれだけのことを私たちは求めています。なぜ、車いすを使っていたら、電車に乗る前に「連絡してほしい」と言われなければならないのでしょうか。
【私たちは望んでいない「配慮」】
JRの言い分として「乗客を安全に輸送するという使命があり、乗る駅だけでなく、乗り換え駅、降車駅への連絡が必要である。それらをしっかりやった上でスムーズに案内するために、事前連絡をいただきたい」ということがあると、市からの話の中にありました。
「安全に輸送するという使命」。それは大切にしてほしいと思います。けれど私たちは、電車に乗ることを「スムーズにしてほしい」とはべつに思っていません。スロープを出すために、各駅に連絡するために、乗り換えに、駅によっては階段昇降機を使うために、時間が必要なことはわかっています。
そこを「いかにスムーズに行うか」というのは、駅無人化をはじめ人員削減を進めるJR側の都合ではないでしょうか?つまりJRが、自分たちの仕事の合理化のために、車いす利用者に対して「事前連絡を求める」という差別対応をしている、ということになります。
また、ノーマライゼーションを考える中で、「合理的配慮(※3)」という言葉があります。これは、障害のない人がある人と同等の権利を行使しようとしたとき、そこに社会的障壁があったら、その障壁を取り除くため、障害当事者とその障壁をつくった者との間で話し合いなどを行い、それが障壁でなくなるような変更や調整を行うことを言います。
日本語では「配慮」という訳されかたをしたので、一方的に障害者のために何かをしてあげる、という意味合いで誤解されることもあるようですが、本来、変更や調整を必要とする本人による意思表明と、配慮を実施する事業者との対話・合意形成が重要になります。
そもそも、車いす利用者であるハトミがぶつかった「社会的障壁」は、「駅無人化により降りたい駅で降りることができなかった」ということです。その障壁を取り除きたかったわけですが、JRがおこなったのは、車いす利用者に事前連絡を求めることでした。これは、私たちにとって「合理的配慮」にはなっていません。むしろ、事前連絡という「新たな障壁」が誕生しました。
「乗り降りをスムーズに行うことが車いす利用者のため」とJRが本当に思っているのなら、そこは違いますと言いたい。私たちは今、車いす利用者だけ事前連絡を求められることを差別だと感じ、怒っているだということを言いたい。
そしてさいたま市とも、この部分を共有したいと思っています。今回の話し合いでは、そこまでたどり着けませんでした。
【次の話し合いにはぜひ多くの人と行きたい】
また、現在はコロナ禍にあり、電車に気楽に乗れる状況ではなくなってしまいました。当のハトミも日常的に呼吸器を使っており、肺炎などにかかるわけにはいきません。そのため、車いす利用者にとって今現在の駅の状態がどうなっているのか、確認することが難しい状況です。
実際に自分の足で行って、自分の目で見て耳で聞き、問題を肌で感じて発信していく虹の会のやり方がなかなか実行できない中ではありますが、また次の手を考えてさいたま市との話し合いを継続していきます。
コロナがはやく収まって、関心をもつ多くの方と一緒にさいたま市に対して行きたいと思っています。
文責:新田和美
※1「JRの駅無人化問題に関する要望書」を提出
提出に至った経緯…2019年6月、ハトミが池袋から電車で帰ろうとしたところ、降車したい南与野駅は「今、駅員がいない時間帯なので降りられない」と言われた。驚いて、虹の会近辺のJR駅で実態調査をおこなうと、6駅中4駅で駅員不在の時間帯ができており、車いす利用者が電車に乗るためには事前連絡が必要ということになっていた。
これは差別だとJR東日本に要望書を提出するも、当たり障りのない回答しか得られず。
その後、JR労組の方に話を聞いたり、他団体や他市からも参加のあった決起集会で情報を集めたりしつつ、3月16日、さいたま市長宛に要望書を提出。回答には話し合いの場を要望していた。
※2ノーマライゼーション条例
さいたま市は、平成23年に全国の政令指定都市に先駆けて「さいたま市誰もが共に暮らすための障害者の権利の擁護等に関する条例」(通称:ノーマライゼーション条例)を制定した。
これは、障害を福祉のテーマではなく人権のテーマとして捉え、社会の障壁と偏見が障害を生み出しているという発想の転換を促す「世界人権宣言」、「国連障害者の権利条約」の考え方に着目し、つくられたもの。
さいたま市HPにもその全文が掲載されていて見ることができるが、とても画期的で素晴らしい条例だと私たちは思っている。ここに書かれていることが実現したら、障害があっても、そうでない人と同じ権利を毎日の中で行使することができ、そのことは障害者だけでなく、今の社会の仕組みや制度によって生きづらさを突きつけられているあらゆる人の人権保障を考えるきっかけとなり、市民全員にとってとても暮らしやすい街になると感じられる。
※3合理的配慮
「障害者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるもの」(「障害者権利条約」)。
以上
【ブログ内関連記事】
◆「さいたま市と第1回話し合い~さいたま市は駅無人化を進めるJRに是正を求めよ!」(2020/06/19)
http://www.nijirock.com/blog/?p=13808
◆「さいたま市は駅無人化を進めるJRに是正を求めよ!その後。」(2020/5/3)
http://www.nijirock.com/blog/?p=13701
◆電車に乗りたいときに乗りたい。要望書提出~JRは駅無人化をやめよ~(2020/3/26)
◆JR東日本とさいたま市に要望書提出~「さいたま市はJRの駅無人化をやめさせよ!」(2020/3/21)
http://www.nijirock.com/blog/?p=13569
◆「さいたま市はJRの駅無人化をやめさせよ!」の本日までの状況(2020/3/6)
◆『さいたま市はノーマライゼーション条例に抵触しているJRの駅無人化をやめさせよ!』決起集会を虹の会本部事務所で開催しました。(2020/2/27)↓
)『さいたま市はノーマライゼーション条例に抵触しているJRの駅無人化をやめさせよ!』決起集会を虹の会本部事務所で開催しました。
◆『さいたま市はJRの駅無人化をやめさせよ!決起集会報告』(2020/2/15)↓
◆『決起集会を行います~さいたま市はJRの駅無人化をやめさせよ!』(2020/1/1)↓
◆『我々は呼びかけます!!~駅無人化によってJRはさいたま市ノーマライゼーション条例に抵触している!』(2019/11/25)↓
◆『駅無人化問題の独自調査第2弾~駅で働く人に聞いてみた』(2019/11/11)↓
◆『緊急!独自調査~JR東日本が押し進める駅の無人化~』(2019/9/28)↓
★虹の会HP↓