「SSCにじ」4月号より転載。
福祉が権利であり続けるために、労働環境を正常に整えなければならない
「市町村事業にも処遇改善加算を!」
虹の会評議委員会
【大切なのは現場の給料アップ】
介護職、ここでは介助という言い方に統一しますが、給料が安いということが言われています。
厚生労働省の「令和三年度介護従事者処遇等調査結果」によると、 介護職の平均月収は31、7万円 ということになっていますが、この金額は平均基本給額(18万7180円)に平均手当額(8万1110円)、平均一時金額(4万8320円)を足したモノです。
ここでは基本給の半分以上が手当や一時金で出ることになっていますが、手当と言っても深夜勤務や超過勤務(残業)の手当だったりと考えると、そもそもの基本給が低いというのは事実かと思います。
それと、現実問題として介助を現場でやってる人がこれだけもらっているかというとこれはかなり疑問で、今や資格がどうしたこうした、もう資格の種類すら覚えられないほどたくさんあって、現場で介助を行わない人たちに多くの給料が出ている、という現実もありまして。
いわゆる「なんたら福祉士」みたいな。その人たちを入れちゃったら、そりゃ確かに上記の金額になるだろうな、とは思います。
現実には、現場で働いてくれる介助者(ヘルパー)がいなければ何もなり立たないのですが、そういうことは「こっちに置いておいて」という感じで、「とにかく資格を取れば給料増えるよ」という甘言で資格を取らせているようにしか見えない。
資格ビジネス大流行ですもんね。
それより何より、結局は現場なんですよ。
現場の介助者に多くの給料が出るようにしないと、とにかく現場はどんどん疲弊する。そうなれば激務で離職する人も多くなるでしょう。
これから高齢化社会だとか言ってる割に呑気なもんです。
結局、現場はバイト、非正規の使い捨てにしているような状況では、おそらく先細っていくんじゃないでしょうか。
百歩譲ってその資格をヨシとして考えても、そもそも、まず介助者として立候補してもらえるような環境を作らなければ、そもそも介助というモノの裾野が広がらないことにもなります。
広がりを持てない職種は衰退しますよね。
【コロナ禍でも通常通り働いて】
それでなくても介助者、まあ我々のような、例えば障害者団体に関わる職員というのはなかなか今集まらない状況になっています。
ウチなんか比べものにならない大きな法人の人も嘆いていましたし、先日は他の作業所の職員に給料を聞いたら16万しかもらってないと言っていて、そりゃ生活できないじゃん…、人も集まらないよねえ…と話したところでした。
そもそもが激務だ、というのもあるし、責任が重すぎる、というのもあるでしょう。
それに見合った給料が出てこない。
確かにその通りで、コロナの時にも、介助職は休めなかった。
そりゃそうですね。
リモートでできるのだったら、そもそも介助の問題の大部分は解決する。
でも、それができないから介助なワケですね。
現場の介助者はそりゃ大変でした。
利用者がコロナに感染したとしても、休めばその人はトイレに行けなかったり、サイアクの場合は死ぬ、ということもあるワケですから。
エッセンシャルワーカーに感謝を、なんて聞こえがいいことを政府は言ってましたが、その結果、2022年の4月から9月まで、月額9000円アップしただけですよ(その後、10月以降も継続されたらしいですが)。
あ、あと戦闘機飛ばしたんでしたっけ?
バカかと思いましたけど。
【よくはなってるが】
とはいえ、確かに我々が運動を本格的に始めた90年代に比べれば格段によくなっていることは事実です。
ただし、一方で、先に書いたような不必要と思われるような資格の強要、また一部、どう考えても障害者自身、障害者の集まりである我々のような任意団体では運営しきれないような「条件」がつくようにもなってきています。
例えば、ウチでは県単事業の生活ホーム事業を利用していますが、これを国単位で考えるとグループホームというのがあります。で、まあそこに移行したら入ってくる金は増えるが、それには設備的にハードルが高かったりします。単純に言えば、設備に金がかかる。
金をかけてもうけを得ようとする企業が参入するならやりやすいのかもしれませんが、例えばウチみたいな貧乏団体では無理です。
ちょっとさっき試しにグループホームを検索したんだけど「年収2億も可能」とかって、もう、なんだか、クループホームがもうけの対象になっていました。
そんな儲けの対象のグループホームに入ったところで、何かプラスになるとは全く思えませんけども、この傾向はグループホームだけではなくて、いろいろな福祉事業といわれるものについて回っています。
サイアクです。
【処遇改善加算に透ける福祉産業化】
さて、ここからが今回の本題なのですが、処遇改善加算というのがありまして。介護職の環境整備、賃金改善を目的に設立された加算、という説明になります。
これ、現場の給料を上げようとするモノとして大いに評価できます。
そして、これがあることで、ある程度の「一時金」をやっと我々も払えているような状況。だからまあ、ありがたいんですよ。
まあ、そもそもの基本給というか、介助単価を増やすのではなく「加算」というあたりに「いつか止めちゃうんじゃないか」という不安は大きくありますが、まあ最初の一歩としてはいいことなのだと思います。
ま、賃金改善ならそもそも介助単価を上げればいいんで、それを加算というのもそもそもちょっと姑息な感じはあって、それは気に入らない。書類も増えるし。
でも、全面的にではないにしろ、評価しますよ、これについては。
ただこれ、居宅介護やグループホームとか国の事業には出て、市町村の事業になる移動支援、地活、生活ホームには出てない。
ウチの場合は、これらをいろいろミックスしてやってますから、もらえる部分ともらえない部分が出てくるんですね。
同じような仕事をしていても、給料に差が出てしまう。
これ、なんで市町村の事業には出ないんでしょう。
市町村や県単の事業なんかはもう辞めたいんでしょうか?
というか、そう言ってる役所の職員もいましたね。
先に書いたようにウチもやってますが、生活ホーム(グループホームの県単版)はやめたい、みたいな。
ま、めんどくさいんでしょうけど、でも、グループホームには移行できないですよ。
金がないから。土地もないし。
そもそも、商売として考えてるわけじゃないから、その部分、投資とかそういうことでもないわけで。
ってか、ない袖は振れない。
市町村には金がない?
いや、別に金があろうが無かろうがそれは市政運営上の問題ですから、高齢化社会に向けてって意味でも必死に捻出してもらうしかないんだけど。
高齢化社会に向けて介助者の待遇改善、だとか、エッセンシャルワーカーに感謝を、とかいうなら、もっと金をよこしてほしい。
そして、資本金がとかって話じゃなくて、実際にやってることを見て判断してもらいたい。
じゃないと、福祉が産業に取り込まれてどんどん「商売」になり、「権利」からどんどん離れていってしまうと危惧します。
(虹の会評議委員会)