虹の会機関紙「SSCにじ」1月号より転載。
後輩を待っている
~ミツ&イノウエから未来の後輩へ②~
井上くん&ミツから「障害者の後輩が欲しい」という話があり、先月から始まったこのページ。ちょうどその頃、さいたま市から「施設紹介誌の作成に係る原稿作成について(依頼)」というメールが来ました。
『本市では、卒業を控えた特別支援学校在校生や日中通所施設を利用する障害のある方が、各施設の事業内容等について円滑に情報が得られることを目的に、毎年施設紹介誌を作成しております。』
おお、いいタイミング!…というわけで、井上くん、ミツ、新田で原稿を作成し、市に送ろうとしているところです。この原稿は市の方で編集されてから市のHPに掲載されるそうで、ここではまだ編集前のものですが、一足早く、一部をご紹介します。興味もってくれる人いないかなあ。
ちなみに障害者生活ネットワークうらわ(通称「ネット」)は、「地域活動支援センター」です。制度がそうなったとき、ネットをむりやり制度の枠に当てはめてみたらそれだった、という感じ。地域活動支援センターをやりたくてそうしたわけではなく、ネットはネットをやりたい。いつでも。(文:にった)
【施設の紹介】
ネットとは
障害者生活ネットワークうらわは、リサイクルショップ「にじ屋」(2001年~)を運営しながら働くということを考え、同時に生活面では、親に頼らなくても生活できること(金銭面や、地域の中で生活する上でのハードルを越えるのに親の力を借りず仲間どうしで助けあうこと)、より豊かな生活を送ることを目標に活動しています。
にじ屋は、「どんなに障害が重くても地域で暮らしたい!虹の会」が母体となって生まれた、リサイクル品を中心に扱うお店です。障害のある人もない人も、それぞれが自分の力を活かして働ける場所を目指しています。
にじ屋において障害者は雇われるのではなく、ひとりひとりが経営者であり、自分の働く場所をつくっていくところです。給料も、もらうものではなく「自分たちでつくるもの」という意識でいます。
週に一度おこなっている職員会議は、障害のある人もない人も職員全員が参加する場であり「全ての決定の場」です。そして障害者だから指導される側、健体者だから指導する側という線引きはせず、あとから入ってきた人は皆後輩です。先輩の障害者から後輩の健体者へ仕事を教えるということも当然あります。障害のある人とない人が一緒に働くとはどういうことか、日々考えながら実践していく場、それがにじ屋です。また、障害のある人と言っても様々です。働くことをめざしつつ、まずは皆と一緒にいるということから始めます。仕事も「これができなければダメ」ということはありません。その人と、どうしたら一緒にいられるか、働けるかを考えていきます。
また自分たちの働く場として全員が主体的に運営していくために、親御さんによる運営への参加はご遠慮いただいています。
私たちには今、給料を10万円にしたいという願いがあります。障害者=低い給料、という状況を壊したいです。また、家に帰って食事をして寝るだけの生活ではなく、旅行に行ったり、コンサートに行ったり、同僚と仕事後に飲みに行ったり、好きな服を買いに行ったりと、より生活を豊かに生きていきたいという思いがあるからです。「こんな生活をしたい」という夢があるからこそ仕事も頑張れます。そしてそこで得た給料は親に決められた「こづかい」ではなく、自分のものとして使いたい。 すでに一人暮らしをしている人も半数近くいますが、障害があっても成人したら親に頼らず生活していける方法を模索しています。
障害があっても、地域で暮らし、青春を満喫し、そして仲間たちとともに成長しながら、互いに素敵な大人として人生を過ごすことが出来るように。そんな大きな目標を持って、障害者生活ネットワークうらわは活動を続けています。
そして常に、自分たちの活動を地域の一般のみなさんに伝える努力をしています。障害があっても働きたい人は働き、そして障害のない人がそうしているのと同じように地域で暮らしていきたい。そんな私たちのことを応援してくれる人をどんどん増やしていきたいです。
【事業の紹介】
にじ屋はこんなことしてます。
障害者生活ネットワークうらわの毎日は、にじ屋を中心に回っています。
にじ屋は地域の方から提供いただいたものを販売し、その売上を障害のある職員の給与としています。提供者はさいたま市内を中心に一万軒近く。毎週のべ300~400人のお客さんが来店し、年間売上は1,500万円超。
まずは提供品を集めるためのビラを作り、そのビラを地域のお宅に配ります。提供品は宅配便で届いたり、にじ屋への持ち込みだったり、こちらから回収に行ったりします。
次に提供されてきた品物を仕分け(ゴミ出し&種類分け)し、値付けし、陳列して販売します。よりたくさん売るための売り場づくり、イベントの企画なども考えます。
障害のある人もない人も皆一緒に考え、それぞれの得意なところを活かして仕事を分担します。
にじ屋の1週間の動きをご紹介します。
月曜日の午前中は、前週に集まった提供品を仕分けます(ゴミ出し、種類分け)。午後は会議。
火曜日は休み。
水曜日~日曜日の10:30~18:00がにじ屋の営業日時です。この中でにじ屋を営業しながら、ビラ配り、品物回収、値付けなども分かれておこないます。水曜日~日曜日の中でもう1日休みを交代でとります。
【事業の紹介】
にじ屋以外の普段のいろいろ
次に、にじ屋以外の様子をご紹介します。主に、仕事の後や休みの日の様子です。
自分で稼いだ給料を、どう豊かに使っていくか。基本的には本人の自由ですが、不安な人は誰かに手伝ってもらいながら給料の「封筒分け」をします。家賃、光熱費、食費、携帯の支払い、飲み会代、洋服代…。
もし買い物に行くとき、ひとりで行けなかったり不安な時は誰かに一緒に行ってもらいます。
「今日は呑みたいなあ」なんていう日は誘い合って居酒屋へ行ったり、誰かの家で呑んだり。
趣味の合う人どうし誘い合って、ライブやプロレス観戦、映画鑑賞などにも出かけます。それらは「行事」や「レクリエーション」ではなく、障害のない人たちがそう生活しているのと同じように、突発的なものです。
髪を染めたり好きな服を着たり…モテたい!ので見た目にも気をつかいます。
実家から出て、一人暮らしや数人で一緒に暮らしているメンバーもいます。困ったことがあれば他のメンバーに相談しながら生活しています。大切なのは自分ひとりでできることではなく、困ったときにすぐ誰かに相談できること。
【事業の紹介】
スーパー猛毒ちんどん
にじ屋メンバーの有志が参加する「スーパー猛毒ちんどん」というバンド活動もあります。ちんどんとは名ばかりで、基本的にはロックショーです。ドラム、ベース、ギター、ボーカル、踊り、旗振り、音響、絶叫担当と、さながら魑魅魍魎、混沌の演舞。自分たちの思いや生活を歌ったオリジナル曲とカバー曲で構成しています。障害者のバンドと言ったとき一般の人が想像する「ほのぼの」「勇気や元気をもらえる」というものとはかけ離れていると思います。障害者はだれかに勇気を与えるために生きているわけじゃない。お世話される対象としての障害者像を壊したい。そんな思いで活動しています。
これまでに、埼玉や東京、大阪などでのいくつものイベントに参加したり、ライブハウスでのワンマンライブも何度かおこなっています(現在はコロナ感染防止のため活動停止中)。
【事業の紹介】
月に一度の機関紙発行
母体である虹の会では毎月機関紙を発行しており、その中で障害者生活ネットワークうらわの様子もたくさんの写真と共にお伝えしています。皆で原稿を書き、自分たちで印刷、組み、封詰め、発送をします。
(了)