虹の会機関紙「SSCにじ」3月号より転載
数年前、障害者の居宅介護に関わる法律が勝手に変わり、置かねばならなくなった「サービス提供責任者」。
虹の会は国の資格制度に反対です。
今回は、資格取得をめざすことで内側からその問題点を考えてみようという試み。
第11回 資格取得への道 FINAL
文・加納友恵
1年半くらい前に勝手にフェイドアウトした資格への道が本日復活、そして無事にファイナルとなりました。
長らく中断してしまい、その後どうなっているんだと気になっていた人もいたかと思います。
いないか。
◆学校再開◆
コロナが流行り始め緊急事態宣言が出て学校が休校になったというのもあり、その後学校は始まったのですが、その頃にはすっかり私のヤル気は削がれていて、行かなきゃなぁと頭の片隅にはいつもありつつ、行きたくないが勝ってしまいズルズルと長引かせてしまっていました。虹の会のみんなもいったいいつ資格終わらせるんだよ、とヤキモキしていたはず。
そんな感じでズルズルしていたら、年末に会計をやってる外口さんからサービス提供責任者がいないということで介助派遣システムに来るはずの介助料が今年度から30%減額になっていた、と衝撃的な報告が出たのでした。資格が無いということで減額になっていることはわかっていましたがまさかの30%減額とは!!ただでさえ来年度の給料を現状維持だとしても払い続けられるかと切迫した事態であったのに、一大事ではないかと、ようやく私のお尻に火が点き、学校を再開したのでありました。
◆何度も異次元に投げ飛ばされ◆
私が資格の学校に行きたくないと思ったのは勉強が難しかったからではありません。何というか資格に対して疑心暗鬼ではいましたが、それでも通うからにはプラスになることを吸収していきたいと前向きに思っていました。今後に活かして行くため、より良い介助の充実や実現を目指すよう行政も資格を取得を勧めているのだろうと思っていたかったからです。
しかし終わってみて、果たして資格って何なんだろうと思うのです。なんでみんなこんなに資格に囚われているんだろうと、さらに疑問が残りました。なんかすべてが絵空事にみえてしまって。
実際授業に出ていた受講生たちは普段現場で第一線にいる人たちばかりなんだけれど、こんなこと実際やっていたら仕事がまったく進まないし終わりゃしないと言ってました。普段どれだけ人間扱いしていないんだかとそれはそれで恐ろしく思いましたが。
在宅の老人の訪問介護についての介護計画書を作るという課題が出たんですけど、朝から深夜まで何度も訪問したり散歩をしたりおしゃべりしながら夕飯の準備をしたり、そして夜間もトイレの度に訪問したり。
老後の資金も潤沢にあり子どもたちとも関係が良好で。計画書を書きながら私は一体いつの時代のどこの国の介護計画書を作っているのだろうと、何度も異次元に投げ飛ばされた気がしました。こんな現実味も無い計画書作ってもなぁとやる気がどんどん失せていきました。
それにそもそも本人ではない赤の他人に、いくら資格を持った専門家だからといってアレやコレや朝から寝るまでの計画を一ヶ月間分立てられそれに則して生活を管理されていくなんて。計画書を作る方も心を殺さなければこんなことやっていけないよな、と思いました。講師は利用者さんの気持ちになってよく考えて介護計画作ってくださいと何度も言ってたけど、資格を持ってるからといって赤の他人にそんなもの決めつけられたくないよ、と、どうしても思うのです。
◆資格が利用者本位のものならば…◆
さて、ひとまず私は役所が取れという資格を取得したわけですが、果たして今後活かせるような場面が出てくるのでしょうか。
そういえばこんなことがありました。
私が今回取得したヤツは介護福祉士の資格を取るために必要な資格だったようで、ほぼほぼみんな次へ進むようで、加納さんも次また通いますか?と何度も聞かれました。私はもうお腹いっぱいなのでこれで終わりにします。と答えたんですけど、え?そうなの?と逆に驚かれました。
自分に付加価値を付けるために資格を取ろうとするのだろうし、行政も資格さえもたせれば、さぞ立派な介護が出来るだろうと思っているのか、ますます資格の締め付けが加速しています。
例えば最近だと「介護職員処遇改善加算」というのがありまして、利用者に直接介護サービスを提供する職員(介護職員)の安定的な処遇改善を図るための環境整備と賃金改善を目的に創設された加算なんですけど、結局それを申請する場合も介助者に次から次へと資格を取らせていくことが条件になっているんですよね。
つまりは介助料欲しければ国のいうことを聞けということなんですよね。
なんだかコレって脅しじゃないのかと思ってしまうのです。資格が本当の意味で利用者本位のモノになっていれば、こんなに私たちも資格に対して不信感の塊になることはないんですけどね。どんどん本質とかけ離れていっているように思えて危機感を感じているところです。
了