Archives for 2021年3月3日

（虹の会機関紙「ＳＳＣにじ」2月号より転載）

ＪＲは駅無人化をやめよ！

～ＪＲ九州を訴えた大分の裁判、徹底心理を求める署名、国の動き、埼玉でのパブリックコメント～

加納友恵

 

大分への署名、全国から

先月号に入れた大分の原告団が取り組んでいる「ＪＲ駅無人化に対する損害賠償請求裁判の徹底審理を求めます」の署名が全国から集まってきているようで、虹の会の機関紙に入っていた署名用紙も続々と届いて更に署名用紙を追加で送って欲しいという依頼やカンパもいただきました。と大分の事務局の小野さんから先日連絡をもらいました。
応援や反響がこれだけ広がっていることは、駅の無人化に不便さや不安を持っている人が全国各地にたくさんいるということ。これまで声を上げることができなかった人たちの思いも受けとめながら、一歩一歩進んでいこう。と原告団のみなさんは話しているそうです。
遠く埼玉からでも取り組めることがあるのではと機関紙に署名用紙を折り込みましたが、埼玉から署名用紙が届いていると聞きみなさんに協力してもらえている事を知り、立ちはだかる壁は大きいけど、応援してくれるたくさんの人たちとあきらめずに声をあげ続けていこうと改めて決意しているところです。署名はにじ屋でも出来ますのでぜひ店員に声かけてください。

大分の裁判

未だコロナ真っ盛りにより私たち自身は表だった動きはできずにいるため、今回は、２月に大分で始まった駅無人化訴訟と昨年の１１月から国土交通省の主催で始まった「駅の無人化に伴う安全・円滑な駅利用に関する障害当事者団体・鉄道事業者・国土交通省の意見交換会」について書いていきたいと思います。
２月４日に大分地方裁判所で行われた第一回口頭弁論は障害当事者が原告として裁判の場に立つということでも注目を浴び、翌日の新聞などで大きく取り上げられていました。
原告の吉田春美さんは『ＪＲの線路が全国各地につながっているように、駅員を残して欲しい気持ちも全国各地につながっている。良い答えが聞けるように明るく元気に楽しく闘う決意です。
僕は、電車に乗って移動することが大好きです。電車に乗って楽しそうな僕の顔を見て、人工呼吸器を付けていても電車で遊びに行くことも会議に出席できると思う人が増えることを望んでいる。残念だが、人工呼吸器を付けて電車に乗っている人に出会ったことがない。

無人駅が増えると障がい者の社会参加の機会を狭めることになる。無人化に反対する気持ちを話し、反対署名７３１１３筆をＪＲ九州に届けたが「重く受けとめる」という言葉だけで、中止する気持ちを感じなかった。
無人化が進み、事前の予約を求められるようになり、当日の時間変更や駅の変更はできないことや融通が利かなくなっていることを何度も体験してきた。今後も、ＪＲ九州の電車に乗って社会参加活動を続けたい。そ

のためにも、高城、鶴崎、大在、坂ノ市、中判田、５駅の無人化計画の白紙撤回を強く求める。』と口頭弁論で意見陳述。

格好つけた難しい言い方ではなくとてもストレートでそうだそうだと思いました。
また代理人の平松弁護士は『国連｢障害者の権利に関する条約」の採択を受けて、障害者基本法が改正され｢合理的配慮｣が明文化された。それを具現化するため｢障害者差別解消法｣が制定され、｢合理的配慮」は民間事業者には努力義務とされた。この訴訟は、ＪＲ九州の大分市内８駅無人化により憲法上の権利としての「公的ないし社会的な支援を受けて移動する権利」を侵害された原告が｢合理的配慮｣を求めてやむなく提訴した。
ＪＲ九州は民間事業者だが、極めて高い公共性を有するため、｢合理的配慮」義務は厳しく検討されるべきである。事前の予約や調整なしに利用できなくなった車いす利用者の権利利益の

侵害は、ＪＲ九州が被る負担より深刻である。
私には移動を困難にする障害はなく、原告の皆さんの不自由を体感することはできない。当事者の声に謙虚に耳を傾け、障害者差別を一掃し、誰しもが安心して暮らせる社会を共につくるため、自らが何をなすべきかがこの裁判で問われている。』と述べたそうで、これも大いに頷くことばかりです。

一方、ＪＲ九州は、人口減少や少子高齢化に伴い厳しい経営環境で交通ネットワークを維持するには無人化が必要だと主張。障害者を排除する意図はなく、相応の合理的な配慮、利便性確保はできていると反論しています。
原告の弁護団の徳田弁護士は今回の裁判の争点について、『駅無人化が車いす、盲導犬を利用する人にとって差別になるか、合理的配慮を欠いているか。そして、障害者差別解消法は民間企業については努力義務としているが、公共交通機関であるＪＲ九州についてどう解釈するか。ＪＲ九州は極めて公益性が強い企業であり、九州の人の足を守るために巨額の税金が投入されている。これから、無人化の不利益について具体的な主張を行っていくことになる。実際に車いすや盲導犬利用者の駅利用や予約調整の検証を行いたい。』と述べています。

残念な事に裁判のニュースをネットで見たとき「ＪＲは慈善団体じゃない」「乗せないと言っているわけじゃないんだから何を文句言っているんだ」「ＪＲは民間企業なんだから経営が厳しくなれば経費削減は当然のことだ。障害者はいつも文句しか言わない」とそのほとんどが障害者のわがままに付き合ってられるか。というモノで溢れかえっていました。
機関紙に何度も書いてきましたが、障害者にだけ電車に乗る時事前連絡を求められる事はおかしいと声を上げるのは本当にワガママなことなのでしょうか。自分が降りたい駅が無人化されたため２つ離れた駅で降りているという車いす利用者、事前連絡したけれど時間が変更になり時間変更の連絡をしたけれどそれには対応できないと言われ駅で何時間も待つことになった車いす利用者、事例を挙げたらキリが無いほど出てきます。それでも障害者は黙って我慢しなければいけないのでしょうか。みんな一度でイイから車いすで駅を利用してみたらと想像力の無いコメントを見る度に思います。
大分の訴訟は次回５月に開かれるそうです。その時に裁判所へ集まった署名を提出するそうなので、引き続き署名のご協力をよろしくお願いします。

当事者を入れた意見交換会　

さて、もう一つの話題は、１１月に突如として始まった国土交通省の主催の「駅の無人化に伴う安全・円滑な駅利用に関する障害当事者団体・鉄道事業者・国土交通省の意見交換会」についてです。
昨年あたりから駅の無人化について国会でも取り上げられたりコロナにより駅無人化が加速したこともあってなのか、全３回の意見交換会を実施するらしいと知り、国もようやく重い腰を上げたかと思っていました。障害当事者団体も話し合いのテーブルに着くということだったので、国やＪＲをはじめとする鉄道事業者の大きな力に屈することなくしっかり障害当事者の声を主張をして欲しいと思っていました。
しかし第一回目の議事概要で、駅を無人化していくこと前提の中でどう安全で円滑な利用を確保していくか今後の課題や対応をそれぞれの立場から工夫を凝らし知恵を絞り解決に向けた取り組みを進めていきたい。というような趣旨の国土交通省からの開催挨拶を読み、やっぱり無人化ありきなんだなと力が抜けてしまいました。出席をしていた障害当事者団体の人たちはこれでもかと駅無人化により人権侵害ともいえる理不尽で悔しい思いを発言していましたが、駅の無人化を認めるわけではなくあくまで有人対応を基本にして欲しいが、無人駅の場合は車両にスロープを掲載して運転士や乗務員がスロープ対応をするなど改善策を考えて欲しい、という工夫策の方に話が広がり、雲行きの怪しさを感じました。
そして１２月に第二回目が開催され、各鉄道会社が実際に行っている工夫や取り組みを中心に話が展開され、駅を無人化するにあたっての説明や周知はやっているのか、との質問に、各地域や自治体を回り説明会を実施し意見をいただき修正できるモノ修正するよう取り組んでいる。と今回裁判で訴えられているＪＲ九州は述べています。そしてどの鉄道事業者も「事前連絡が無くても対応する」「無人だからという理由で駅の利用を制限しない」と述べています。しかしスムーズにご利用いただくためご協力を求めている。という注釈付きです。それに対して出席している障害者当事者団体のメンバーたちはにわかに信じがたいことと発言。
実際調査したところ多くの車いす利用者がひどいところでは３日前までに連絡やその時間帯は無人なので発券出来ないと言われた者など何かしら理不尽な思いをしていると。その対応は本当に現場の駅員だけの問題なのかと。それについては国土交通省の方から鉄道事業者のみなさんには前日までの連絡を求めるといったことはしないよう教育周知の徹底をぜひお願い申し上げる。指導なのかお願いなのか曖昧な形でで終わってしまい、だれもそれ以上突っ込むこともなかったようで、私はとても物足りない終わり方でもったいなく感じました。
せっかく障害当事者メンバーとして出席して、障害のない人が得ている機会と同じものを提供して欲しい、同じように利用できるようにして欲しいということを言っているだけだ。今の状況は障害者だけが不利益を被っているわけだがこれはやむなしという考えは捨てていただきたい。社会的障壁があるのであればそれを無くすよう取り組んでいただきたい。と会の冒頭で発言していたのに、何となくうまく聞き流されてしまったように感じました。
その後鉄道事業者からＡＩでの対応を考えていくだのモニター付き券売機や筆談も対応できるカメラ付きインターホンだのバリアフリー勉強会をしているだのタブレット端末で対応だのＱＲコードで不便の内容案内しているだの無人化に向けてまっしぐらの発言が相次いでいますが、果たして本当にそういうことで障害のない人と同じ条件で電車に乗ることが出来るのだろうか。そこに投資するお金があるのであればまずきちんと駅員を増やす努力をしてもらいたいと私は思います。
そもそもサポートセンターによる一括遠隔監視ではとっさの対応は出来るわけがないのです。無人駅は巡回していると言っているようですが、それでは結局駅員が巡回してくる時間に合わせて電車に乗るか結局事前連絡をしなければならなくなります。言っていることとやってることが支離滅裂です。
そしてついには障害当事者メンバーから、ホームと電車の段差や隙間を解消できれば一人でも乗り降り出来るようになり事前連絡も待たされる時間も無くなってベストだが、それには莫大な資金と時間が必要になるが、現実的な方法としてスロープを電車に掲載させ乗務員がスロープの設置をすれば駅員を増やさなくてもイイしお金も大きくかからず出来るのではないかと、無人化でも何とか工夫してやっていけるという、無人化ありきの提案までされてしまい、えっ、それはちょっと違うんじゃないか、と私は引っかかりました。
駅は車いす利用者だけがスムーズに電車に乗れればイイという場所ではないと思うからです。無人化され治安が悪くなり怖くてトイレを使えなくなったと聞いたことがあります。また犯罪を防ぐためにトイレを使用禁止にしたという駅も増えて困っていると聞きます。切符の買い方がわからない時、道を聞きたい時、落とし物をして困った時、痴漢や犯罪の被害に遭っても助けを求められないなどたくさんの人の安心安全だれもが使える駅であるためにやっぱり駅には駅員がいて欲しいです。
さらにいえば、鉄道事業は民営化されているとはいえ公共交通機関という位置づけであるのだから国としての監督責任があると思いますが、障害当事者団体も鉄道事業者もどちらもそこには触れていません。国土交通省は、物理的な制約、人的な制約などいろいろと制約要因はあると思うが、出来ない理由を探すのではなく、どうすれば少しでも「できる」に近づけるかという観点から検討していただければと発言していましたが、鉄道事業社に注意喚起しているようで鉄道事業社の解釈任せという傍観者ぶりが見え隠れし結局国は責任逃れをしていると感じます。くれぐれも障害当事者のみなさんの取り組みや声を聞きましたよ、というポーズで終わらせないよう、障害当事者団体の人たちは話を聞いてもらえてよかったで満足してお行儀良くならなくていいので私たちの声をしっかりと国や鉄道事業者に届けて欲しいと思っています。次回まとめの第三回目が開催予定らしいですがどのように最終とりまとめをしていくのか注視していきたいと思っています。

埼玉県へパブリックコメント

そして２月入ってすぐの頃、障埼連の國松さんから埼玉県第六期障害者支援計画案(市町村の地域福祉の取り組みの支援)に対する県民からの意見を募っているから駅無人化問題について意見を書いたら、と連絡をもらいました。コロナの収束が見えず自分たちの動きがほとんど出来ていない状態ということもあり、埼玉県民コメント制度なんて聞いたこともないし、どうせ形式だけのアリバイづくりじゃないのかという気はしてますが、県が重要な施策などを立案する際、施策等の趣旨や内容を広く県民に公表し、これに対していただいた意見を考慮して意思決定を行うとともに、寄せられた意見に対する県の考え方を公表するというモノらしいので書いて送りました。
『ＪＲや鉄道は公共交通機関であるとなっているにもかかわらず、近年では駅の無人化が加速しています。それにより、２，３年前から車いす利用者が鉄道を利用する際に「できれば事前に連絡をお願いします」と言われるようになりました。実際一時間待つよう言われた者もいます。バリアフリー化やノーマライゼーションが社会の常識になりつつある現代において、障害者にだけに事前連絡を求めるという行為はノーマライゼーションの社会に反する行為だと思います。だれもが安心して安全に使える駅になるよう行政として指導して欲しい』。
意見を送ったからといって今の無人化の状況がひっくり返るという奇跡はそう簡単に起きそうもありませんが、自分たちの地元埼玉で声を上げ続けることをやっていきたいと思っています。　　　　　　　　　　（了）

以下、『だれもが安心して暮らせる大分県をつくる会』事務局ＨＰより転載。

◆署名に関する連絡先◆

『だれもが安心して暮らせる大分県をつくる会』事務局
大分県大分市都町２丁目７-４-３０３
（在宅障害者支援ネットワーク気付）
http://daremoga-oita.net/index.html
電話:097-513-2313　 FAX:097-529-7212
メールinfo@daremoga-oita.net
署名用紙の印刷したものが必要な場合には必要数を大分の事務局までご連絡ください。
期限は設けていません。裁判の進行に合わせて、集まったものから届けていきたいと考えています。事務局のホームページからも用紙はダウンロード出来ます。

「みんなのJRになってほしい」チラシ 署名用紙

署名用紙

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【虹の会ブログ内関連記事】

◆小さな声を大きなうねりに～大分のＪＲ訴訟、署名活動の応援お願いします。～（2021／2／4）

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◆「ＪＲは駅無人化をやめよ！」～久喜市議会で駅有人化を求める意見書を可決したことについて、議員さんから話を聞いた～(2020/12/3)

◆「ＪＲは駅無人化をやめよ！」の現在  (2020/11/1)

http://www.nijirock.com/blog/?p=14071

◆「できれば事前連絡」にこだわる理由～ＪＲの駅無人化問題～(2020/10/2)

http://www.nijirock.com/blog/?p=14004

◆「最後に安全を守るのは現場の人間ではないのか～関係者と話をした」
～さいたま市は駅無人化を進めるＪＲに是正を求めよ！～
(2020/9/18)

http://www.nijirock.com/blog/?p=13947

◆【議事録】第１回話し合い～さいたま市は駅無人化を進めるＪＲに是正を求めよ！」(2020/7/27)

http://www.nijirock.com/blog/?p=13880

◆【総括】第１回話し合い～さいたま市は駅無人化を進めるＪＲに是正を求めよ！」(2020/7/27)

【総括】第１回話し合い～さいたま市は駅無人化を進めるＪＲに是正を求めよ！

◆「さいたま市と第1回話し合い～さいたま市は駅無人化を進めるＪＲに是正を求めよ！」(2020/06/19)

さいたま市と第1回話し合い～さいたま市は駅無人化を進めるＪＲに是正を求めよ！

◆「さいたま市は駅無人化を進めるＪＲに是正を求めよ！その後。」（2020/5/3）

さいたま市は駅無人化を進めるＪＲに是正を求めよ！その後。

◆電車に乗りたいときに乗りたい。要望書提出～ＪＲは駅無人化をやめよ～（2020/3/26）

http://www.nijirock.com/blog/?p=13581

◆ＪＲ東日本とさいたま市に要望書提出～「さいたま市はＪＲの駅無人化をやめさせよ！」（2020/3/21）

ＪＲ東日本とさいたま市に要望書提出～「さいたま市はＪＲの駅無人化をやめさせよ！」

◆「さいたま市はＪＲの駅無人化をやめさせよ！」の本日までの状況（2020/3/6）

http://www.nijirock.com/blog/?p=13512

◆『さいたま市はノーマライゼーション条例に抵触しているＪＲの駅無人化をやめさせよ！』決起集会を虹の会本部事務所で開催しました。（2020/2/27）↓

http://www.nijirock.com/blog/?p=13416

◆『さいたま市はＪＲの駅無人化をやめさせよ！決起集会報告』（2020/2/15）↓

http://www.nijirock.com/blog/?p=13365

◆『決起集会を行います～さいたま市はＪＲの駅無人化をやめさせよ！』（2020/1/1）↓

http://www.nijirock.com/blog/?p=13065

◆『我々は呼びかけます！！～駅無人化によってＪＲはさいたま市ノーマライゼーション条例に抵触している！』（2019/11/25）↓

我々は呼びかけます！！～駅無人化によってＪＲはさいたま市ノーマライゼーション条例に抵触している！

◆『駅無人化問題の独自調査第２弾～駅で働く人に聞いてみた』（2019/11/11）↓

http://www.nijirock.com/blog/?p=12868

◆『緊急！独自調査～ＪＲ東日本が押し進める駅の無人化～』（2019/9/28）↓

緊急！独自調査～ＪＲ東日本が押し進める駅の無人化～

★虹の会ＨＰ↓

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